「成瀬は天下を取りにいく」を読む
- By: Uchidatoshio
- カテゴリー: 未分類
ここ数年、1冊も読書をしていません。恥ずかしい限りです。私が活字を読むのはインターネットのニュース記事くらいです。パソコンの画面に「成瀬は天下を取りにいく」のタイトルと白服の女性が横を向いたイラストが目に入りました。「天下を取る」からは織田信長しか発想のできない私です。この女性がどのように天下を取るのかと知りたくなりました。石田衣良、友近や西川貴教など有名人ががこの本を推奨していて面白そうです。本の評判が結構良いので、富里市の図書館の蔵書検索をしました。残念ながら蔵書がありません。成田市立図書館の蔵書検索をすると8冊の蔵書があります。ただし、全部貸し出し中で、その後の予約が多数あります。成田市に在住、通勤及び在学のどれにも該当しない市外在住の私では予約ができません。それらの予約が解消した後にやっと借り入れができます(成田市民になりたい。)。富里市の図書館に蔵書が無いので、図書館に初めて本のリクエストをしました。約十日ほどして蔵書になったとの連絡が届き「成瀬は天下を取りにいく」の借り入れができました。
本の末尾で作者宮島未奈氏を滋賀県大津市に在住、京都大学文学部卒業と紹介しています。なかなかの才媛(羨ましい~!)。「成瀬は天下を取りにいく」は、6章からなり、その第1章「ありがとう西武大津店」が2021年5月号の『小説新潮』で、第3章の「階段は走らない」が2022年5月号の『小説新潮』で発表され、その他の章は書下ろしと記載されています(実際には章の付番はありません。)。一つ、一つの章は別々の話です。各章の第一人称の人物が変わるオムニバス形式ですが、西武百貨店大津店の閉店を一つの軸とし、成瀬という人物をもう一つの軸として自転車の両輪のように話が進み、最終章でよくまとまっています。冒頭にも記したようにあまり本は読まない私ですが、以前森田誠吾氏の「魚河岸ものがたり」と「銀座八方亭」がオムニバス形式で面白かった記憶があります。森田氏は東京商科大学(一橋大学)を昭和23年中退です。文豪と呼ばれる森鴎外、芥川龍之介、夏目漱石など東京帝国大学他有名校出身者が多いことに感心します。
「成瀬は天下を取りにいく」の文章は、至って平易です。しかし無駄がありません。すごく読みやすく気楽に読めるのがすごくいいです。成瀬は幼少時から、運動能力・歌唱力・絵画力・知力など全てに図抜けているのに飄々としている人物です。多分、作者宮島氏もそれに近いところがあったのでないかと勝手に推察します(京大卒の宮島氏の発想力が凡人の私からは輝き過ぎです。)。成瀬は自分の思ったことに突き進んで行き、周囲からどのように思われるかを気にしません。成瀬という人物を創造した宮島氏は、成瀬とは反対に周囲の点と線を全て見通すような能力の方なのかと作品を読んで思います(第4章に「線がつながる」)。東大や京大などに進学する超秀才の方々の受験や発想力など垣間見たような気分で楽しめました。
また、西武大津店の開店から閉店までの44年間及びその跡地にマンションが竣工するまでの期間を舞台に大津での地域の風物や行事など大津が満載で聖地巡回の旅にいざなうようです。もっと気軽に読書を始めようかなと思わせてくれるような本でした。